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2009/05/31

ノムヒョンの悲劇

 手っ取り早く言えば、彼は早く生まれ過ぎたのかもしれない。社会を先導する者にありがちなことだが、大衆の先を行き過ぎていて、大衆はその彼に過大な期待をし過ぎて、自らを葬らせてしまったという感じがしてしかたない。   

 私の留学時代はそのままノムヒョン政権と重なる。既成の政治家には見られない先見的な感じのする彼が大統領に就任したものの、社会的基盤さえまともに構築されていないのだから、やるべきことは山積みだった。在任中、ノムヒョンには失望したという声を私は何度となく聞いたものだ。  

 軍事政権が終わり、形式的には1992年に初めての文民大統領が出たといっても、解放から47年、それまでの道のりを考えると、人々の意識はおいそれとは変わらない。誰もが食べて生きていくのに精一杯だった。

 永訣式に臨んだ人々の様子を映像で見る限り、失ってみて、改めて思い知ったノムヒョンの存在感に打ちひしがれているという感じだ。1988年に釜山から立候補して国会議員になるときの演説は、「とにかく誰もが安心して食べていける世の中を作りたい」というものだった。その年はソウルオリンピックが開かれた年だが、実態はオリンピックどころではなかったのだ。  

 白いお米を何不自由なく食べていけるようになったのは、それほど昔のことではないということ。これは隣の国の人間として銘記すべきことのように思える。

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