このブログを検索

2009/06/02

傲慢な人間

 自殺する人の大半は病気だ。人間は本来、生存意欲というものが遺伝子の中にあらかじめインプットされて生きている。誰も死んでみたことがないから死に対する恐怖がある。生きているときはあまり死を意識しないで、日々の瑣末的なことに追われて生きている。  

 それでも死は生と隣り合わせにある。よく生きることは、よく死んでいくことだ。「死にたい」は 実は「よく生きたい」という欲求の裏返しだ。よく生きられないから死んでしまいたい、いっそ死んだら楽だろうなどと考えるのだ。 

 ウツ病にかかったら、昔なら死んでしまうしかなかった。バージニア・ウルフも深刻なウツ病で結局自殺した。絶望という死に至る病は、簡単には治せない。でも現代は医学が多少なりとも発達して、対処療法であるにしても、死んでしまいたいという思いを緩和させるようにはなった。それでも人間の脳に関してはわからないこと、わかっていないことが多過ぎる。原因がわからないから対処療法しかないのだ。 

 強大なエネルギーを発揮しなければならない政治家は、どこか無神経にならないとやっていけないのかもしれない。でもたまにノムヒョンのように良心的で繊細な神経の持ち主もいる。もう少し家族や社会が死に至る病に関して理解していたなら、彼は助かっただろう。  

 「明日、病院に連れていこうとした矢先に自殺されてしまったという家族を今まで何人見たか知れない」という精神科医の言葉は重たい。「頑張れ」とか、「病は気から」、「甘えているのよ」などと利いた風なことを言う輩が後を絶たないが、人間が一体どこまで自分をコントロールできると思っているのだろうか。それは、あまりにも傲慢な考え方だと思う。 
 
 虚栄心や無知によって、多くの助かる命が失われていく。

0 件のコメント: