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2020/11/07

グレーテルのかまど、そして、姉と弟の関係について。

  NHK Eテレで「グレーテルのかまど」を見ている。スイーツをヘンゼルがグレーテルの指示通り作っていく。姉は、黒板にその日の指示を残して外出。かまどが具体的に指導しながら番組が進んでいく。スイーツの歴史もわかるし、どうやってあんなおいしそうなスイーツが出来ていくのか、毎回、楽しみに見ている。

 ただ、気になることが一つある。スイーツを作っていくヘンゼルと、外出したまま一度も姿を現さない姉グレーテルとの関係だ。グリム童話では、ヘンゼルが兄、グレーテルが妹だったと思う。兄と妹、姉と弟。この男女のきょうだい関係が面白いといえば面白い。

 一般的に、妹は兄に従順だけど、弟は姉の言うことを聞かない。なのに、この番組では、弟が驚くほど姉を敬愛していて、姉の帰宅のベルが鳴ると、「あっ、姉ちゃんが帰ってきた!」と言って、出来上がったスイーツをほったらかして、出迎えに走るのである。姉が外出前に残す、黒板の意味不明のメモに対しても、懸命に対応しようとする。そうでなければ、この「グレーテルのかまど」という番組は成り立たない。

 番組制作者は、なぜ、実際にはあり得ない弟と姉の関係を設定したのだろう。視聴するたびに私は考え込んでしまうのだ。小学校低学年までなら、姉の後を追いかける弟という設定は成り立つ。でも、その時期はすぐに終わり、その後は、弟は姉の世界からいなくなり、自分の縄張りの中で生き始める。ましてや、思春期になると、姉に対して、ことごとく反抗する。

 Eテレのこの番組で姉に対するリスペクトがあまりにも高いのは、わざとそういう設定にしたのではないか。実際にはあり得ない、姉に従順な弟、従順というよりは、姉の存在を多少怖がっている弟をどうしても登場させたいという脚本や演出側の意図を感じるのは、私だけだろうか。


2020/11/06

忙しい主婦

  昔、子供の頃、「宇宙家族ロビンソン」という漫画をTVで見ていた。登場人物の名前は忘れたが、ロビンソン家の主婦がやたら忙しがっていたことがいまだに印象的だ。

 ほとんどの家事をボタンひとつで済ます。掃除も洗濯も。料理はどうだったか記憶にないが、家事を済ますと、「ああ、忙しい」と言いながら、シューっとカプセルに入り、お出かけするのだ。どこに行ったのか、これも記憶にないが、PTA活動など、とにかく、自宅と宇宙空間を行ったり来たり。

 子供心に思ったものだ。「ボタン押すだけなのに、どうして忙しいと言ってるんだろう?」。そして、21世紀の現在。家事はかなり簡略化された。もちろん、ロビンソン夫人のようにボタンひとつで、というわけにはいかないが、洗濯はボタンひとつ、せいぜい干すのに手間はかかる。でも、乾燥も機械に任せれば、洗濯の手間などほとんどない。

 掃除もお掃除ロボットの登場で、格段に手間が省けるようになった。せいぜい、棚の上とか、お掃除ロボットの届かない所をサッサと拭いて終わり。料理も電子レンジのおかげで、かなり楽になった。なのに、主婦は言うのだ。「ああ、忙しい。あれもこれも大変だ」。

 パートタイムの仕事、PTA活動、子供の塾通いの世話、スマホのラインのやりとり、その他あれこれ。あらゆる情報は必要以上に溢れかえっている。その中から必要なものを見極めてゲットする大変さは確かにあるだろう。

 でも、私は秘かに感じているのだ。あのロビンソン夫人を羨望のまなざしで見ていた幼い私と、現在の主婦たちの嘆きを見ている私との間に、なんの乖離もないことを。