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2020/11/06

忙しい主婦

  昔、子供の頃、「宇宙家族ロビンソン」という漫画をTVで見ていた。登場人物の名前は忘れたが、ロビンソン家の主婦がやたら忙しがっていたことがいまだに印象的だ。

 ほとんどの家事をボタンひとつで済ます。掃除も洗濯も。料理はどうだったか記憶にないが、家事を済ますと、「ああ、忙しい」と言いながら、シューっとカプセルに入り、お出かけするのだ。どこに行ったのか、これも記憶にないが、PTA活動など、とにかく、自宅と宇宙空間を行ったり来たり。

 子供心に思ったものだ。「ボタン押すだけなのに、どうして忙しいと言ってるんだろう?」。そして、21世紀の現在。家事はかなり簡略化された。もちろん、ロビンソン夫人のようにボタンひとつで、というわけにはいかないが、洗濯はボタンひとつ、せいぜい干すのに手間はかかる。でも、乾燥も機械に任せれば、洗濯の手間などほとんどない。

 掃除もお掃除ロボットの登場で、格段に手間が省けるようになった。せいぜい、棚の上とか、お掃除ロボットの届かない所をサッサと拭いて終わり。料理も電子レンジのおかげで、かなり楽になった。なのに、主婦は言うのだ。「ああ、忙しい。あれもこれも大変だ」。

 パートタイムの仕事、PTA活動、子供の塾通いの世話、スマホのラインのやりとり、その他あれこれ。あらゆる情報は必要以上に溢れかえっている。その中から必要なものを見極めてゲットする大変さは確かにあるだろう。

 でも、私は秘かに感じているのだ。あのロビンソン夫人を羨望のまなざしで見ていた幼い私と、現在の主婦たちの嘆きを見ている私との間に、なんの乖離もないことを。

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