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2008/09/04

岡本太郎が見た韓国 1964・1977 川崎市岡本太郎美術館

 9月28日まで、川崎市の岡本太郎美術館(小田急線向丘遊園駅より徒歩20分ぐらい)で「岡本太郎が見た韓国 1964・1977」が開催されている。昨日、行ってきたが、お薦めである。まず、場所がいい。生田の森の緑に目が休まり、同じ敷地に日本民家園があって、100円X25枚分、2000円の回数券を買えば、日を改めて何度でも訪れることができる(1000円の回数券もあり)。 

 美術館は入場料700円。館内に入る前に右手横に敷設された洒落たカフェで簡単な食事をとった。ガラス張りのカウンターに家人と腰掛けて外を眺めると、岡本作の牛の角を模したモニュメントが水に浮かんで残暑の中、光り輝いていた。メタセコイアなのか、木肌の赤い木を見上げると、首が痛くなるほど天に向かってまっすぐ伸びている。 

 館内の照明も効果的に使われている。私は岡本の絵画自体はあまり好きではないが、2006年に東京都写真美術館で行われた、岡本の見た東北というイベントに接して、彼の写真、文章の才能に驚いたことがあったので、今回も常設展より「韓国」に期待を寄せていたのである。  彼の見た「韓国」は1964年と1977年のそれぞれ1週間ほどの旅程の中で、岡本が初めて訪れた韓国を身体で感じ取ったすべてを記録したものである。凡人が行く旅行とはさすがに違う。人が感じないことを感じ、人が見ないものを見て、その後も岡本自身のものの考え方に長く影響を及ぼすことになるのだ。特にシャーマンについての見識は優れている。朝鮮半島全土にわたってみられるシャーマン(巫女)の儀式(クッ)が地方毎に多様であることに、岡本は着目し、私自身も今更のように驚かされたのである。 

 岡本は何度も書いている。 「韓国は北ユーラシア大陸から直接何かをもらっている。李氏朝鮮時代、中国からの影響が強いといっても、それだけには終わっていない。その大らかさ、色彩、遊び心など、カチッと決まった中国には見られない韓国独特のものが感じられる」  岡本は芸術家であり、文筆家であり、そして何より、欲深な人間であると自認している。その優れた感受性は芸術家というより優れたジャーナリストだったのではないかと思わせるものがある。 

 さあ、また生田の森を訪れよう。森に接するだけで頭の中のモヤモヤがスキーッとしてくるような気がするからだ。

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