11時着のKTXに乗っている崔先生に電話を入れてみる。どうも眠っていたらしく、いつになく力のない声に驚く。しばらくして彼から電話が入り、今約束のカフェに向かっているところだと言う。彼とも約1年ぶり。いつもニコニコとした人当たりのいい雰囲気はそのままだが、開口一番「乗り物に乗るとすぐに寝てしまうんですよ」と先ほどの不機嫌な声について釈明した。パンソリを専門にしている20代後半の女性を連れている。崔先生にはいつも連れの女性がいる。会うたびに違う女性である。いつだったか、故郷が同じ尚州(サンジュ)だとういうソウル在住の有閑マダムと登場したときにはちょっと呆れてしまった。この女性、ゴルフマニアらしく、サングラスに、胸が深く空いたブラウス姿で、女の私でも思わず胸の谷間を覗き込んでしまったことを思い出す。崔先生の人脈の広さには驚くばかりだった。
パンソリの女性は、やはりソウルで約束した女性の大学の先生とこのカフェで落ち合っていた。しばらくぶりだったらしく抱き合って再会を喜んでいた。その先生は中国の朝鮮族出身の人で、ソウルで大学に就職したらしい。私が晋州で時々声を掛け合っていた朝鮮族の博士課程の人になんとなく面立ちが似ていた。それはきっと化粧っ気のない素朴な雰囲気がするからかもしれない。ソウルの女性は化粧が濃いものね。
カフェで少しおしゃべりをした後、総勢5人で早めの昼食をとる。崔先生の驕りだ。なんだか申し訳ない気がした。私は出来たての雑誌10部を先生に渡した。写真を見て即興で詩を書いてもらうページを担当してもらったのだが、デザインの関係で写真が泣き別れになってしまい、先生は「これはちょっとなあ」とご機嫌ななめ。「私のせいではなく、今回のデザインを担当したT氏に文句言って下さい」と言うと、「もう忘れました。いいです。」とちょっとおどけた後で「うちに戻って見たら、また腹が立つような気がする」と小さな声で言った。
12時半から始まるセミナーの会場はソウル駅からタクシーですぐらしい。彼らは食後時機に向かい、私はまたチャンシキさんと二人きりになった。本当はオリンワンジャが来ることになっていて、昼食も一緒にするはずだったのに。何度か電話を入れると、「今、バスで向かっています」と答えたきり、一向に姿を現さない。(つづく)
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