「今オフィステルのロビーです」私は急いで食券を2枚持って、9階から降りて行った。昨年より少しやせた感じだ。春らしいピンクの花柄模様のワンピースにジーンズのジャケットを羽織っている。日本語能力試験も、あれ以来、2級、そして1級まで取って、その不断の努力には驚くばかりだった。
ホットサンドイッチとコーヒーを飲みながら、彼女はずっと日本語をしゃべっている。昨年に比べると格段の進歩が見られる。今は銀行の契約行員をしながら、早朝も日本語レッスン、銀行が終わった後もまた日本語レッスンに励んでいると聞いて、大いに感心する。
「1級の試験が思ったより成績がよくなかったので」とのこと。少しでもブラッシュアップしたいという意欲に満ちている。学院の担当教師も「日本に留学したらどうか」と勧めるらしい。私もそれに関して何度か相談メールをもらっている。要は留学して日本語を磨くのか、あるいは日本語を使って何か専門の勉強を始めるのか。私は1カ月くらいの語学短期留学を勧めてみた。
語学はある程度マスターしたら、その先、何をするかが問題になる。翻訳・通訳の専門家になるための勉強をするのか、あるいは日本の大学で歴史や現代文学を学ぶのか。彼女はまだその具体的なことを想定しているというわけではなさそうだ。今のところは単に日本語を駆使するのが楽しくてしかたないという印象を受けた。
朝食後、オフィステルの部屋に連れて行って、少し話をし、またソウル駅へ。11時に知り合いと待ち合わせているのだ。そのことはあらかじめ言ってあったので、ソウル駅から来て再びソウル駅に行くことも彼女は厭わなかった。「給料日を指折り数えるよりも」私に会う日を指折り数えていたと言われ、少々照れてしまった。さてタクシーに乗ってソウル駅に行ったが…(つづく)
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