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2024/12/20

原発再稼働に走る自民党政権

  福島第一原発の後始末も碌に出来ないまま、政府は原発の再稼働を進めていく方針だ。40年以上経った、経年劣化も問題視しない前世紀の遺物を使おうとしたり、新規に小型のものを作ろうとしたり……と、およそ何の反省もない恐怖の方針を見るにつけ、13年前の3.11大事故は何だったのかと愕然とするのだ。

 お粗末なロボットで取り出した耳垢のようなデブリの全容(900トン近いとされる)は、未だに明らかになっていない。完全に取り出すまでに、この先70年、いや170年はかかるという専門家もいる。

 毎月の電気料金に「廃炉円滑化負担金」という負担金を私たちはいつまで払わされなければならないのか。廃炉にしていく具体的な計画なぞ、私は見たことがない。原発を維持し、廃炉にしていく経費がいかに膨大なものか、福島の大事故で嫌というほど思い知ったにもかかわらず、東京電力は政府と一丸をなって、少しずつ休止中の原発を再稼働し、新たに作ろうとしている。

 風力、太陽光のほかに、昔は「地熱」利用の再生可能エネルギーの話もあったが、思うように進んでいない。プレートだらけの日本列島に、平気で54基もの原発を作っていった連中は、日本の未来を考慮するほんの少しの思考力さえ持っていなかったということだ。

 今、全国のあちこちでLEDの光の祭典が行われているのを見るにつけ、一時叫ばれていた「省エネ」の機運はどこに行ってしまったのかと思う。

 今しか見ていない大多数の政治家は、百年後の日本に対する責任などどこ吹く風といった態度で、たった13年前の事故さえなかったことにしようとしているようにしか見えない。

 

2024/12/05

韓江(ハン・ガン)「菜食主義者」한강「채식주의자」を読む。

  10月末に、韓国の知り合いから、このたびノーベル文学賞を受賞した韓江さんの小説を送りましょうかと、ブログの安否掲示板で連絡を受けた。読んでみたいと思っていたが、昨今EMSの送付が少々面倒なことになっていて(手書きの宛名がダメになり、ローマ字で機械打ちしなければならない云々)、送ってもらうのも気が引けたのだが、教保文庫から直接郵送してくれるシステムがあるとのこと、とりあえず『菜食主義者』だけでもお願いすると返事していた。

 ノーベル文学賞のおかげで注文が殺到したようで、まあ、今年中には届くだろうと思っていたら、なんと、11月5日には航空便で無事届いた。送る手続きをしてくれた当の知り合いもびっくりしていた。

 本の奥付を見ると、初版が2007年10月30日、改訂版の初刷りが2022年3月28日、2024年11月19日(なぜか、未来の日付になっている)には79刷りとある。

 1970年生まれで今年54歳になる韓江さん。この若さで、アジアでしかも女性でノーベル文学賞受賞というのは驚き以外の何ものでもない。

 『菜食主義者』は、채식주의자「菜食主義者」、몽고반점「蒙古斑点」,나무 불꽃「木の炎」という3つの小説から成る長編小説である。

 まずは辞書なしで「菜食主義者」を読んでみた。ぐいぐいと引き込んでいく筆力に驚かされた。ヒロインの叙述(彼女が見た夢や、考え)は、斜体の活字、夫や親戚の様子は普通の活字で描写されていて、それらが交互に登場する。明るさ、軽さとはおよそ縁のない重たい現実をつきつけられた気分だ。

 1980年の光州事件や、1948年の済州島4・3事件、最近では、セウォル号の事故をテーマに執筆を続けている韓江さんだが、詩人として文学界にデビューしただけに、その描写力には詩人らしい繊細さと彼女独自の世界が余すことなく展開しているようだ。

 『菜食主義者』は、日本語訳が出ていると思うので、関心のある方は是非読んでほしい。