10月末に、韓国の知り合いから、このたびノーベル文学賞を受賞した韓江さんの小説を送りましょうかと、ブログの安否掲示板で連絡を受けた。読んでみたいと思っていたが、昨今EMSの送付が少々面倒なことになっていて(手書きの宛名がダメになり、ローマ字で機械打ちしなければならない云々)、送ってもらうのも気が引けたのだが、教保文庫から直接郵送してくれるシステムがあるとのこと、とりあえず『菜食主義者』だけでもお願いすると返事していた。
ノーベル文学賞のおかげで注文が殺到したようで、まあ、今年中には届くだろうと思っていたら、なんと、11月5日には航空便で無事届いた。送る手続きをしてくれた当の知り合いもびっくりしていた。
本の奥付を見ると、初版が2007年10月30日、改訂版の初刷りが2022年3月28日、2024年11月19日(なぜか、未来の日付になっている)には79刷りとある。
1970年生まれで今年54歳になる韓江さん。この若さで、アジアでしかも女性でノーベル文学賞受賞というのは驚き以外の何ものでもない。
『菜食主義者』は、채식주의자「菜食主義者」、몽고반점「蒙古斑点」,나무 불꽃「木の炎」という3つの小説から成る長編小説である。
まずは辞書なしで「菜食主義者」を読んでみた。ぐいぐいと引き込んでいく筆力に驚かされた。ヒロインの叙述(彼女が見た夢や、考え)は、斜体の活字、夫や親戚の様子は普通の活字で描写されていて、それらが交互に登場する。明るさ、軽さとはおよそ縁のない重たい現実をつきつけられた気分だ。
1980年の光州事件や、1948年の済州島4・3事件、最近では、セウォル号の事故をテーマに執筆を続けている韓江さんだが、詩人として文学界にデビューしただけに、その描写力には詩人らしい繊細さと彼女独自の世界が余すことなく展開しているようだ。
『菜食主義者』は、日本語訳が出ていると思うので、関心のある方は是非読んでほしい。
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