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2010/06/08

マクベスの森

 家の裏手に有名進学校がある。ポプラ並木に覆われているのだが、冬は葉っぱが全部落ちて、校舎の大部分が見える。それが春が過ぎ、あっという間に蒸し暑くなった最近は葉っぱが生い茂り、建物が見えなくなっている。いつの頃からか、我が家では「マクベスの森」と呼ぶようになった。
 
 今日見たら、森が4割がた出来上がって、見るからに頭の良さそうな生徒たちがいるであろう校舎の半分以上が隠れてしまっている。毎年の風景なのだが、今年はやけに未練がましくその光景を見つめてしまうのだ。 

 これで秋が来て、葉が落ち、ポプラの枝が天空に晒される頃には2010年も終わる。2000年が始まったとき、10年後の2010年という年をまったく想定しなかった。そもそも21世紀なんてまだまだ先のことだと思っていた。友人の子供たちはすっかり成長し、親はすっかり老い、家では85歳以上の老親を3人も抱えている。そんな日が来るなんて10年前には考えだにしなかった。 

 聡明な人間なら先のこともきちんと想定して日々を堅実に過ごしていくのであろうに、私ときたら、結局その日暮らしのいい加減さにくるまれている。「マクベスの森」はある意味恐怖の森だ。決して乗り越えることのできない時間という壁が急に胸に襲ってくるので、やりきれない。  

 関東地方もそろそろ梅雨に入るのだろう。

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