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2025/11/07

武田砂鉄著「なんかいやな感じ」

   武田砂鉄の「なんかいやな感じ」(講談社、2023年)を読んだ。1982年生まれの著者が過ごした時代背景がよくわかった。彼の幼少期、思春期、就職、ライターとしての独立(2014年)はそのまま「平成」という時代に重なるのだが、同時に思いのほか深刻な「人権侵害」の時代だったということに気づく。

 2つの大震災(阪神淡路、東日本)、オウム真理教による地下鉄サリン事件、消費税の導入、自己責任論の蔓延、民主主義を破壊し続けた自民党政権……、とこれでもか、これでもかと思うほど、不安と恐怖に満ち満ちた時代だったのだ。そして、現在もこの傾向は続いている。

 原子力政策1つをとっても、東京電力と自民党政府の「福島第一原発事故は、なかったことにしよう」とする姿勢について、武田はコラムニストの故小田嶋隆氏の次のツイートを引用している。

「事故が起こっていない原発は安全だから動かす。動いている原発は安全だから動いてる。だから動かし続ける。事故が起こった原発は、事故以前には安全に動いていたということは安全だったはずだから事故が起こるのはおかしいのだから実質的には安全。ということは事故が起こった原発も安全」

 もう、笑うっちゃうしかないよね。でも、こんな情けない時代を生み出したのは、我々なんだよね。メディアは、この時代が生んだ事象を「就職氷河期」「失われた30年」などと総称して、安易に語りたがるけど、十把ひとからげに言うことで、細部の大切なことをごっそり見逃してしまうことになりかねない。

 SNS、テレビなどのいうことを鵜吞みにして、自分を見失ってしまうことのないよう、日々、努力していくしか、ないよね。

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